職業作家を目指す

音楽制作の現場では、作詞家や作曲家を”作家”と呼びます。
趣味で楽しむ音楽と仕事として向き合う音楽とでは、
ここでは職業作家を目指す上で、最低限押さえておきたいポイントをいくつかご紹介します。


コンピュータに強くなる

バロック音楽の時代からつい数十年前まで、作曲家の仕事はただひたすら楽譜を書くことでした。その楽譜を演奏家が実演することで、音が聴衆に届けられていたわけです。ところが近年、ITの発展と共にコンピュータのプログラミング(打ち込み)による音楽制作が個人でも比較的容易にできるようになり、楽譜ではなく”すぐに聴ける音声データを作ること”が作曲家の職能として求められるようになりました。つまり、これまでは演奏家任せだったあらゆる表現を全て作曲者自身の手で完結させなければならなくなったのです。打ち込みや楽器演奏はもちろん、本来エンジニアの領域であったレコーディングやミキシングといった技術までもがその範疇となった現代の職業作家は、五線紙とペンではなくDAWと呼ばれる音楽制作専用のソフトウェアを用いて作編曲を行っています。

【DAW】Digital Audio Workstationの略で、音声の録音、編集、ミキシングなど音楽制作に必要な一連の作業を行うためのシステムです。

メーカー コメント
Pro Tools Avid 業界標準のレコーディングシステムが進化した超定番
Logic Apple Mac版のみだが価格が破格でOSとも相性抜群
Cubase Steinberg YAMAHAの子会社メーカーのため国内ではシェア多数
Digital Performer MOTU 以前はプロユースと言えばコレだったが最近は落ち目な印象
Studio One PreSonus DPとは対照的に最近メキメキと評判を上げている後発DAW

この他にも様々な製品がありますが、プロの9割以上が上記いずれかを使っています。

楽譜を書いて作業完了という仕事は限られているため、DAWが使えないとなると職業作家として食べていくことは非常に難しくなるでしょう。制作時だけでなく業務上のデータのやり取りもコンピュータベースとなるため、例えばCDの規格である「16bit/44.1kHz」が何を意味しているか、あるいは2系統のTOS-Link端子を持つオーディオI/OにadatとS/PDIFのopticalを接続した場合に何chの送受信ができるかというようなデジタルオーディオに関する知識が必要になります。また、納品時の主流であるLPCMは数曲(数分)でかなりの容量になるため、サーバ経由で受け渡すためのFTPにどうアクセスするかというようなネットワーク周りのリテラシーも欠かせず、この辺りはいわゆる”一般的なオフィスワーク”と何ら変わりない仕事内容と言えます。

音楽制作:作曲とは、曲を作るということ。楽譜を書くことでも、頭の中にあるメロディを鼻歌で歌っても成立するわけです。これに対して音楽制作は「すぐに聴ける音声データ」を作るということです。点で、作曲とは一線を画しています。

レコーディング:打ち込みは作家自身が演奏家の手を借りずにイメージを具現化できる点で時間的にもコスト面でもメリットが多く、作曲のスタンダードになっています。ところが、ヴァイオリンやギターなどの弦楽器およびトランペットやフルートなどの管楽器は、打ち込みでは表現しきれない(生っぽさに欠ける)ため生の楽器演奏を収録します。また、歌や台詞といった声も同様に収録を行います。

ミキシング:TDともいいます。

コンピュータが使えなくても素晴らしい曲を書く作曲家は大勢います。
ところが、コンピュータが使えないと作家業だけで食べていくのは極めて難しいというのが実情です。

様々なジャンル・スタイルに対応する

作編曲を職業としてためには、どんなジャンルでも一定のクオリティで制作することが求められます。どんな仕事でも好きな分野だけをやるということは難しいもので、職業作家はPOPS、ROCK、R&B、SOUL、FUNK、JAZZ、FUSION、TECHNO、HOUSE、CLASSIC、民族音楽、ウタモノからオーケストラまで、ジャンルや楽器編成を問わずあらゆるオーダーに応える必要があります。音楽のバックグラウンドによって得手不得手があったとしても、選り好みしたり苦手だからと断ってしまえば、どんどん仕事は来なくなってしまいます。発注には100%応える。ここが趣味で楽しむアマチュアクリエイターと職業作家との最も大きな違いかもしれません。

様々なジャンルの音楽を幅広く聴き、より多くの引き出しを備えておくことが大切です。
聴いたことがない(自分の中にない)ものは、外に出すことができません。

音楽的に汲み取る

音楽制作の現場には、ドレミのわからない方もたくさんいます。プロデューサー、ディレクター、エンジニア、いずれも各専門分野のエキスパートなので、最も音楽的な知識を多く持つのは、作曲家やアレンジャーなのです。決定権のあるポジションからのリクエストは「高いから少し下げて」「明る過ぎるからもうちょっと暗くして」「キラキラ感が足りない」こんなざっくりとした感じです。これを受けて、具体的に何をすべきかを判断し、提案しなければなりません。どの調にするのか、どの和音を使うのか、リズムを変えるのか、楽器や音色を変えるのか、そしてそれが与えられた時間や予算で可能か、感覚的なリクエストの意図を上手に汲み取って、それを具現化するために導き出すこと、。独りで黙々と作業するイメージを持たれがちですが、多くのスタッフとの連携が重要である点においては、他のどんな仕事とも違いはありません。

音楽の専門知識を持たないプロジェクトメンバーとの円滑なやり取り。
コミュニケーション能力も、職業作家に求められる重要なスキルのひとつです。