1-6 音階

音の高さを「音高」といいます。音高は音の周波数が大きいほど高くなりますが、440Hzという物理的な数値では音符として扱いにくいので、音楽の世界ではド、レ、ミなどという名前で呼びます。この名前のことを「音名」または「階名」といい、音名は絶対的な音高を、階名は相対的な音高を表します。

日本では音名の表現に日本語、英語、ドイツ語、イタリア語、の4カ国言語が使われています。主に日本語(ハニホヘトイロ)は学校教育で、英語(CDEFGAB)はポップスやジャズで、独語(CDEFGAH)はクラシックで使われますが、伊語(DoReMiFaSolLaSi)はちょっと特別です。

音名は音を区別するための記号なので「ハ〜ニ〜ホ〜」「シ〜ディ〜イ〜」「ツェ〜デ〜エ〜」などと曲に乗せて歌うことは普通しませんが、伊語だけは「ド〜レ〜ミ〜」と歌詞のように当てて歌(ソルミゼーションといいます)われます。これは世界中で伊音名が階名としても使われていることに由来します。

1-2 音度

「音程」の数え方がわかったところで、今度は「音度」の話をしたいと思います。聞きなれない言葉かと思いますが、簡単に言うと音度とは「その調の何番目の音か」を示すものです。1番目ならI度、2番目ならII度のように、音程も音度も「度数」で表現するのですが、これが混乱の一因となっています。

音程はアラビア数字、音度はローマ数字で表記することで、読み書きの際は区別がつきます。ところが会話の中で「◯度」と出たときには、その度数が音程を指しているのか音度を指しているのか、前後関係から推察しなければなりません。ちなみに音度は英語ではディグリー(英:degree)といいます。

ローマ数字で表す「音度」は、小文字か大文字かで意味が変わります。[i、ii、iii、iv、v、vi、vii]と書いた場合は単音の音度を、[I、II、III、IV、V、VI、VII]と書いた場合は和音の音度を指します。例えば、IVの構成音は「iv、vi、i」ということができます。

音度の具体的な音を導き出すには、まず調が決まっている必要があります。ハ長調(=Cdur)とした場合、IVは[F、A、C]つまりFmajorのコードです。構成音はハ長調の[iv、vi、i]になっていますね。もうひとつ、ホ長調(=Edur)のIIIのコードが何かを考えてみましょう。

これを解くには、2つの知識を組み合わせて考えます。1つはIIIの構成音が[iii、v、vii]だということ。もう1つはホ長調の音階がE、F#、G#、A、B、C#、D#だということです。これらがわかっていれば、答えは[G#、B、D#]を構成音に持つ「G#m」だとすぐに辿りつけます。

1-1 音程

作編曲に興味を持ったとき、一番最初に知っておくと良いのは「音程の数え方」です。音程とは「ある音から別のある音までの隔たりがどれくらいか」を示すものですが、例えば「ミからラまで」の音程ってわかりますか?あるいは「ミからラ#まで」だったら?・・もし答えに迷ったら、そこがスタートです。

どうして「音程」がスタートかというと、メロディを考える時にもコード(和音)を付ける時にも、もれなく音程の考え方が登場するからなんです。感覚で何となく作れてしまうスゴイ人もいるかもしれませんが、きちんと順序立てて曲を設計しようと思ったら、やはり音程を数えることを避けては通れません。

日本では「音程」という語が2つの意味で使われています。1つは正しい訳であるインターバル(英:interval)、もう1つは本来「音高」と呼ぶべきピッチ (英:pitch)です。音程が良くないと聞くと作曲家は音の選択に、演奏家は自分の演奏に、それぞれ問題があったと感じるようですね。

奏者が合奏中に音程を指摘されるのは、「自分の出す音」と「仲間の出す音」が楽譜に書かれている音程とは違った響きを作り出してしまっているときです。奏者がピッチを僅かに上下させつつ正しいインターバルが鳴るようコントロールしてくれるおかげで、作者の意図した音楽が再現されるというわけです。

ピッチの良し悪しは演奏者にお任せすることにして、作曲者はインターバルを常に意識しておく必要があります。曲を料理に例えるとしたら、楽譜はレシピ、音程は下ごしらえ、といった感じでしょうか。ここで不適切な選択をしたり分量を間違えたりすると、ベストな仕上がりにはならなくなってしまいます。

下ごしらえとしての音程が特に活躍するのは、和音について詳しく見ていくときです。裏を返せば、音程が数えられないと和音を理解することはできません。音程の広狭はまるで「大さじ1杯」「小さじ1杯」というのに似ていて、クラシックの和音もジャズのコードも等しくその分量通りに構成されています。

イチゴ味のグミとリンゴ味のグミを、目隠しして順番に口に放り込まれたとします。どちらがどちらか言い当てられる気がしませんか?人間の味覚、嗅覚、聴覚は、インプットされた感覚をもう一度経験すると記憶と共に蘇るという点でとてもよく似ています。よく知っている味、匂い、音には敏感なんですよ。

このような五感の感覚質を「クオリア」といいます。食べたことのある人が口にすればすぐに”それ”だとわかるように、音程や和音も固有のクオリアを持っているので、一度定着すれば種々の和音やコードの違いが自然に感じ取れるようになります。そしてそこから先こそが、作曲の一番楽しいところですね。

クラシックやジャズでは多彩な和音が曲の魅力に大きく影響するため、作編曲のためのエクリチュールはまず音程からスタートします。この学習には「楽典」を使いますが、楽典についてはこちらでご紹介しています。http://www.co-music.com/ecriture/1-0/

「音程」は2つの音の隔たりなので、まずどちらを基準に数えるかを決めます。どちらからでも同じ結果になりますが、低い方を基準にするとわかりやすいでしょう。基準音を1として、もう一方がいくつになるかをドレミファソラシに沿って数えます。基準がドで他方がミなら、ド1レ2ミ3で「3度」です。

では基準がレで他方がシだったら?レ1ミ2ファ3ソ4ラ5シ6、というわけで6度です。簡単ですね!ではミからファの音程は?ミ1ファ2で2度ですね。ファからソの音程は?ファ1ソ2で同じく2度です。でも、ピアノの鍵盤を見てみるとミ〜ファは半音、ファ〜ソは全音。同じ「2度」と呼んでいいの?

2度は2度でも半音と全音の音程は全然違いますね。その区別をするために「2度」の前に「長」「短」という言葉をつけて、半音は「短2度」全音は「長2度」と表現します。「長」はメジャー(英:major)、「短」はマイナー(英:minor)の和訳です。音程がより広い(長い)方が長2度です。

同じ理屈でドからミ♭の音程とドからミの音程を「短3度」「長3度」と区別します。同様にド〜ラ♭は「短6度」ド〜ラは「長6度」ド〜シ♭は「短7度」ド〜シは「長7度」となるわけですね。では、ドからソ♭の音程とドからソの音程はどうでしょう?「短5度」と「長5度」?・・・残念、ハズレです!

4度と5度はちょっと特別で、ドからファの音程は「完全4度」、ドからソの音程は「完全5度」と呼ぶことになっています。何故かって?・・それは140字でつぶやくには壮大すぎるテーマなので、ここは「そういうもの」と割り切って覚えてしまいましょう。ドからソ♭の音程も少し特殊な扱いをします。

「完全〜」とつく完全協和音程には、半音広がると「増」半音狭まると「減」という言葉が冠せられます。ドからソの音程が「完全5度」なので、半音狭まったドからソ♭は「減5度」というわけです。ちなみにドからファ#だった場合は「増4度」となります。ピアノの鍵盤上はどちらも同じなんですけどね。

これまで登場しませんでしたが、1度と8度も完全協和音程の仲間です。しかも4度&5度以上に稀有な存在で「絶対協和音程」という異名を持ちます。なにしろ完全1度はユニゾンで、完全8度はオクターブなのですから、”絶対協和”するに決まっていますよね。そうでなければ、チューニングを忘れていたのかも?

1 楽典

楽典って、何だか知っていますか?音楽の基礎としてクラシックでは重要視されているものですが、楽典の3分の2はポップスにも共通する知識なんです。ジャンル問わず基本中の基本というわけですから、作曲するにも演奏するにも音楽人なら知っておいて損はないはず!

楽典に含まれる知識の多くは楽譜の読み書きに欠かせないため、楽典=楽譜の文法などと呼ばれることがあります。ただ、単に楽譜についてのルールだけを指すのであれば「記譜法」というエクリチュールが別に存在するので、こちらの方が「楽譜の文法」としてはしっくりくるかもしれません。では両者の違いは何かと言うと、記譜法が楽譜の読み書きに特化したものであるのに対し、楽典に書かれている内容は必ずしも読譜・記譜に必要な知識だけではないという点です。例えば楽典に書かれている和音についての知識は、楽譜を読み書きすることと直接の関係はありません。音符や休符の書き方は単音でも和音でも差異はなく、シンプルに同じルールに基づいて記譜するからです。ところが、作曲の観点からすると和音の知識は必須です。もし和音の定義や積み方、単音とは異なる特殊な取り扱いについて知らなければ、作品の幅が大きく制限されてしまうでしょう。それに演奏をする際にも和音の知識は役立つため、記譜法を内包する「楽典」を学ぶ事には大きな意義があるわけです。

日本では義務教育(音楽の授業)の中で楽典の内容をある程度は学ぶので、日本で生まれ育った人なら最低限の音楽知識は持っていることになります。リコーダーを演奏したり混声合唱を歌ったりするために、ト音記号や音名などについて習ったのを覚えていますか?これらの知識も含め、楽典に書かれている内容は次の3つのいずれかに該当します。

1.音高に関すること(音名、音程、音階、調、和音など)
2.時間に関すること(音価、リズム、小節、拍子など)
3.表現に関すること(音色、強弱、速度、奏法など)

記譜表現考え方
1.音高に関すること必須数値理系的
2.時間に関すること必須数値理系的
3.表現に関すること省略可言語・記号文系的

このうち「1、2」と「3」には、決定的な違いがあります。それは「3」がある程度演奏者に委ねられる(委ねるべき)要素だということです。実際「3」に属する知識は言語的なものが多く、「優しく歌って」とか「ここからここまでかけて大きくして」とか「だんだん早くなって一時停止」というような指示を専門用語や記号で表記することになります。でも、無理して専門用語や記号を覚えなくても、必要に応じて楽典を見れば解決しますよね。これがいわゆる暗記モノである「3」のよいところです。しかも、ポップスやジャズの世界では演奏者任せなのが通例で、表現に関することを作曲者が楽譜に書き入れることは滅多にありません。

一方、「1」「2」については楽譜を書く上で省略することはできず、作曲者がしっかりと記しておかなければならない要素です。とくに「1」は音程や音度などの計算が中心で、かなり理論的な考え方をすることになります。「2」は多少の暗記要素もあり、音符や休符の種類を一通り学べばすぐに自分の知識として使えるようになるのですが、「1」の方はとにかく数えることばかりなので計算(足し算と引き算のみですが)が嫌いな人はうんざりしてしまうかもしれません。

そういうわけで、楽典のヤマは「音高に関すること」だと言えます。「3度でハモらせる」「半音上げるために臨時記号を使う」「転調して調号を変える」こういった作編曲上の処理は、一見音楽的なように見えて実はどれもひたすら数える作業なんですね。また、楽典の3つの要素とは別に、音楽の3要素というものがあります。内容は「メロディ」「ハーモニー 」「リズム」で、そのうちのハーモニー(=和声)については次の記事で紹介しています。